婆が転んで爺が泣く

何ちゅうこと言うんや!
実は婆ちゃんの首が廻らなくなってしまったのです。
一昨日様子を見に行った時には、
「大丈夫よ~、大した事ないから。寝違えたみたいよ。」
こっちも何かと野暮用で様子をチェックしなかった。
ところがである。
「どうも具合が良くなくてね、爺ちゃんがすごく心配してね・・・」
そんなこと、早めに言ってくれれば医者につれて行けたのにねぇ。
土曜の午後に言われてもねぇ。
やっとこ、様子を見に行って、コーヒー入れたり、夕食作ったりした訳で。
したら爺ちゃん、もう婆ちゃんを死なせてしまって、
「おれ、一人でどう生きてきゃいいんだ。ご飯を炊いてお新香でも食べてるか。」
だってさ。そして、「本とだよ。婆ちゃんいないと困るんだよ。」

思わず婆ちゃんと顔を見合わせてしまう。
結局爺ちゃん、自分のことしか頭にない位びびっている、というか余裕がないのであった。
婆ちゃんが可愛そうな状態なのに、そんなことはコレッポチも言わない。

「あのね、爺ちゃんね、お茶碗を洗ってくれたのよ。うふふ。」
はいはい、ご馳走様。教育したらいいよ、婆ちゃん。

92歳ともなると心細くて心細くて仕方ないんだろうね。
頼りにしていた自分の子どもたちは早々と片道切符を手にして行ってしまったのだから・・・
「世の中もっと大変な人がいっぱいいるよ。何とかなるよ。」
と、すました顔で言ってあげた。
意地悪の嫁は「私がいるから安心をしていいよ。」なんて絶対言わないよ。
まだまだ元気なうちは助けないからね。長男の嫁もいるしね。

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