先住民の生活

チアパス州のサンクリストバルデカサスという、とても魅力的な街を訪れた。dsc07001.JPG
色鮮やかな街並みと古い教会とで妙な調和がとれている。
その郊外には多くの種族の先住民が、自身の生活習慣をかたくなに守っているところがある。
写真を撮られることも極端に拒み、撮影をされることで魂を引き抜かれるのではないかと危惧をしているという。
そのサンファン・チャムラ村の中央にあるカテドラルのみ撮影が出来た。
dsc071861.jpgその教会の中では時代を越えた遥か異次元の世界につながるような空気が広がっていた。
数え切れない程のキャンドルがあちこちに不ぞろいに置かれ、よく見るとその中にある種の空気を含んだような、まとまりのある炎の塊が見えたりする。
ある場所では母親が力なくだらんとした赤子を抱き、真剣な顔で膝まついている。そのそばでトウチからもくもくと出る香の煙を吹きかけている祈祷師がいる。その口からは何やらモゴモゴと祈りや経にも聞こえるような呟きが吐き出され、一種のトランス状態になっていった。
彼らに医者は不要だ。全てが神の思し召しであったり、邪悪なものにとり付かれわけで、ただ祈祷師に祈りを請い、お呪いで回復を図るしかないのだ。

一方、数人の村人が一団となって口々にお経を唱え一心不乱に身体を動かしている。
あちこちに固まって、それぞれが祈りを捧げ香を焚き、教会内はその煙で霞んで見える。
床にはバラバラの松葉をびっしりと敷き詰め、松葉や線香、その他さまざまな匂いとも香りともつかない、敬虔な気持ちに引きずり込まれるような空間に満ちていた。
昔からの彼らの宗教観がしっかりと日常にどっぷりと浸かって、それなしでは生きてはいけない迫力を持っていた。

どこの誰ともつかぬ我々のような外来者など一切目には入っておらず、何の影響もないというより、自分達の世界だけを見つめているのだった。

そのうちこの異空間に居させていただいているという意識が生まれ、その片隅で自然に座禅を組み心休ませている自分がいた。

top | Original design by John Oxton | Illustration by Denis Radenkovic | This design is released under a Creative Commons licence