8月30日 TGVに乗りパリを離れた。
車窓からは都会の喧騒を過ぎると、やがて農場へと姿を変えていった。
暫くするとひまわり畑が広がっていった。結実した黒い頭をうな垂れるように下を向いていた。その黒さが異様な空気を作っていた。
刈取られた麦畑や干し草のロールも点々と転がってリズムとなり、コーンの新芽の緑がアクセントを作り、白と茶色の牛たちの聞こえもしないモゥーという声が沈みがちな私に音楽をくれた。うつらうつらと眠くなっていった。
昼頃、リヨン駅に着いた。
明日のシャモニ行きのキップを買っている間にトイレに行った。
大抵トイレは有料で、入口で40チーム払う。便座が無い時は腰を浮かして用をたす。毎回水を流して掃除をするから、下はいつも濡れている。パンツのすそを揚げておかないと濡れてしまうので要注意だ。
駅のコンコースを抜けてエスカレータで下に下りると、目の前には花いっぱいの駅前広場があった。
まず宿泊先を決める。ガイドブックにあったホテルに行って部屋を取った。
荷物を置き、ウェーっとベッドに飛び乗るのがまず最初にやるしきたりだ。
背を思いっきり伸ばして、靴を脱いで深呼吸をすると生き返ってくる。
腹の虫の指示に従って外に出て行く。
現金をATMで下ろす。この時、支払機のそばには大抵空き缶をもった人が座っている。だから誰もいない機械を探して下ろさないといけない。
ピザの店に入って昼食をすます。ここではヴァフェのランチがあったので好きなものを食べ、デザートも食べ、お腹をさすりさすり散歩がてらベルクール広場に出た。
広場の西にサンテクジュペリの像がある。
更に西に行くとソーヌ川の向こうにフルヴィエールの丘が素敵なバランスで私たちを向かえてくれる。恰も両手を広げて招いているようだった。この辺一帯が世界遺産に指定されているリヨン旧市街地だ。
ケーブルで丘の上に出ると聖堂裏からリヨンの街を見渡せた。お揃いの茶色い屋根の家が整然と並んでいる。フルヴィエールの聖堂には壁いっぱいのモザイク画やステンドガラスの美しさに圧倒される。
外のベンチに座ってゆっくりとのんびりと美味しい空気を吸っていたのは娘達だった。私は付近を歩き回り、可愛い花を見つけては写真を撮って日陰に入っては、人々の動きが面白くてじっと眺めたりしていた。結局ベンチには10分も座ったろうか。
ふた息もついた頃、ふらふらと丘を下って行った。古い街の中を歩いているとタイムスリップしたような感覚になってくることもある。
2世紀のローマ時代の劇場がそのまま使われていたり、民家にしても代々住んで来ている、石の文化と地震の少なさがラッキーなのかもしれない。
下っている途中に小さな広場に出た。
崩れそうな教会の前で腰を降ろして一休みをしていた。広場の隅には動物用の水飲み場があった。利用者は多い。人も動物身体を大きく曲げて水を飲んで行った。
広場では悪戯ざかりの子どもを叱る親の姿が面白くて、昔ああやって子どもをしつけた事を思い出して、思わず笑ってしまった。ようは、やって行けない事はするな!人に迷惑をかけるな!と本気で叱っていた。本気で叱るの図を日本の通りでは殆んど見かけない。どうしてなんだろう??