中禅寺湖へ

早朝3時に熊谷を出発して、中禅寺湖へ向かった。
男体山を御神体にしている二荒神社の駐車場へ5時過ぎに到着。
身支度を整え、娘達はオジサンと男体山へ登山、私は右足に故障があるので、中禅寺湖周辺で過ごす。
旧イタリア大使館別荘
見上げると、神社の後ろに三角の男体山がうろこ雲に映えて堂々と立っていた。4人を見送った後、私はリュックに背負い、湖畔を時計回りに歩き出した。
何しろまだ6時前、ひっそりと静かな朝だ。

部活の合宿に来ているらしいグループや、早朝散歩を楽しむ人がまばらにいる程度だった。

大きな赤い鳥居まで来て、中禅寺のサインを見つけた。
そうか、ここの湖の名前はお寺ありき、だったのかと、改めて知った。
中禅寺湖には初めて来た事に気付く。ちょっと変ねぇ、いつでも来る事ができるというのはこういう事なんだ。中禅寺の境内入り口は閉まっている。
9時に開門らしい。
この前を通って旧イタリア大使館別荘記念公園の看板を頼りに進んでいった。途中、フランス、ベルギー、イギリスの各国の別荘がある。どれも日本建築様式をベースにしているようだ。
旧イタリア大使館の別荘もそうだった。内外の壁にはヒノキの皮を上手く利用してはってある。編みこんだように素朴だが、冬暖かく、夏涼しい、合理的なつくりになっている。栃木県が1千万円で買い上げ、15千万円をかけ修復したものだ。ここに着いたのは7時ちょっと前。やはり雨戸が閉まったままだった。
モダンな建物の前に中禅寺湖は広がり、木製のヨットの係留場も水の上に突き出ている。
水面を渡ってくる風は涼しい。気温は20℃、木製デッキに腰かけひっそりと本を読み始める。静かさの中にチャッポンと、水音が体に染みてくる。誰もいないこの空間を独り占めだった。
やがて管理人が来て、雨戸を開ける音が響いてきた。
何枚もあるから開館準備もたいへんそうだったが、楽しそうに誇らしげにせっせと開けていた。
「おはようございます!」
この挨拶は朝にピッタリな言葉であると改めて思う。
当たり前なこと、理屈ぬきで納得できることは少ないのではないか。
ゴトゴトという生活音は全然気にならず、これもこの環境の中の一部となり溶け込んでいるようだ。
別荘には開館時間以前から上がりこみ、ソファに腰掛け、ゆったりと静かに読書を楽しむという贅沢を味わった。

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