貸切グラスボート

 バスの時間に合わせて山形屋まで送ってもらう。そこから南郷方面行きのバスに乗る。
海岸通に出ると相変わらず、車窓からの眺めはすこぶるよく、いかにも南国である。椰子の木の並木を抜け、遥か海上に奇岩が点在し、それらが海岸線に沿って走る県道から見え隠れをしている。バスの中では地元の老婦人が親切に周辺の解説をしてくれる。そしてグラスボートに乗るには、次の次で降りると丁度良いから、と言って自宅近くで下車して行った


 フェリーターミナルには二人の男性がいた。他に誰もいないので、マリンビューワーなんごうというグラスボートに付いて聞いてみる。間違いなくここから出ると言いながら、一人が切符売り場の中に入って行った。10時半から出るので、暫くお待ち下さい、と言いながら又カウンターから出てきて、近くのテーブルと椅子を指差し、座って待つように薦めてくれた。みかんでもどうぞ、食べてくだされや、とみかんを手渡ししてくれ、彼等も一緒に食べ出した。実にゆっくりと時間が流れていく。

 10時半近くになると、二人揃って「では、そろそろ行きますか?」と案内してくれた。
私の他に誰も乗客はいない。これって貸切と同じような状況だ。乗客一人に船長さんと乗組員の二人という豪勢なクルーズだ。折角だから、船長のそばに着いて色々聞いてみる。この船に乗る前は漁船の船長で長いこと航海をし、世界中に出かけた事、免許の取得について、何で船長になったのか・・・など聞いているうち、湾の外にでて海中公園に近づいてくると、奇岩が目の前に幾つも現われた。その岩の上には釣り糸を垂れている人もいた。
 誘われて、船底に行き海中を眺める。正に南国、トロピカルフィッシュが沢山泳いでいる。コバルトブルー、ツノダシ、クマノミなどなじみの魚がいっぱいだった。餌付けをするからと上に出る。海上から見るそれらのお魚さんも可愛い。そして次はトンビ用に餌をやると、十数匹のトンビが旋回し上手に餌をくわえて行く。そうこうしているうちに早、1時間近く経過し、帰港の時間になって行った。冷たくも気持いい潮風を受けながらグラスボートはターミナルに帰って行った。
めがね岩 クマノミ 海中公園付近 神社 鳥居 
 ボートに乗るのは楽しい。潮風は美味しい。晴れて凪なら尚の事。それもあっという間に終わって、下船する。
 宮崎に来たからにはスキューバダイビングも経験してみたかった。そこで、船長に聞いてみると、やっぱり地元、良く知っていて電話を掛けてくれた。そのまま、明日の11時に予約を入れた。費用は器材、指導料すべて含めて、11000円也。夫婦浦付近で安全かつ景色のよい場所だそうだった。
 バスの時刻をチェックする。ふと、見上げると小さな神社が見えた。ちょっと足を運ぶ間もあったので行ってきた。細い階段を登り、お参りを済ませると社の後ろには真っ赤な鳥居が重なるようにトンネルを作っていた。ここは港町。昔から船の安全を常に祈り、感謝する生活が営々と繰り返されて来たのであろう事は容易に想像できる。

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