拝啓
すっかり寒くなりました。元気にお過ごしでしょうか。
私も嫁いで川崎市にやって来て、3度目の冬を迎えました。
人もベビーカーも自転車も自動車もたくさんの、初めての政令指定都市で、なかなか慣れない、とてもなじめないと頑なになってしまうこともある私ですが、ちゃっかり川崎市民としての誇りを感じることもあります。
それは、ずばり、岡本太郎!
ご存じの通り、岡本太郎さんは“ベラボウ”なお方です。おそらく、私が一番尊敬している日本人です。
太郎さんの母、かの子(呼び捨て)の実家が川崎市高津区にあった縁で、生前に寄贈された大多数の作品を所蔵・展示する川崎市岡本太郎美術館が生田緑地内につくられました。本人よりの“寄贈”ではありますが、「芸術新潮」の記事によると、「作品を売らない」太郎さんが、「一作品でも譲ってほしい」と粘る市に根負けした結果、“くれた”そうです。
生田緑地をこよなく愛する市民たちによる美術館建設猛反対を受け、生前の開館にはいたらなかったものの、当時の市長がこれを断行したそうです(地元出身の夫に聞いた話)。滅した翌年に完成しました。
万難を排して、事を成就した当時の市長には、心から敬服します。価値観の違いは仕方ありませんが、間違いなく、川崎市のベラボウな宝ですからね。
緑豊かな森の中に、元市長が心血を注いでつくった本当に立派ですてきな美術館があるのですが、もったいないことに、空いています。
私的にはいつ騒ぐかわからない小さい子を、あまり心配することなく連れて入れるのがとてもうれしいんですが。空いているから、私にも余裕があるし、子供も意外と落ち着いていられるのかもね。作品はもちろん、美術館もすばらしく、まるで快適なんですよ。うまく表現できないな。
乳児連れでも太郎を満喫できる幸せ。快適な空間で、太郎作品が四方から容赦なく挑発してくるという、希少な体験ができます。お姉ちゃんズにもぜひ、体感してほしいです。
川崎市に越してきて、太郎作品と美術館には励まされ、救われたような気になっているのですよ。